LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった性的少数者(セクシュアル・マイノリティー)の総称です。
LGBTやLGBTQsのことを知ろうと思って勉強してみるも、自分の性的指向も性自認もピンとこないし、身近に当事者がたくさんいるわけでもないし、よくわからないな〜と悩んでいませんか?
実は、なんとなくわかっているつもりでいても、認識や理解が少し間違っているだけで、悩んでいる自分自身やLGBTQsの当事者たちを傷つけてしまうこともあります。
「自分は違う」と必要以上に考えて、自分らしさを押し殺して生活することは非常に辛いことです。
また、当事者を励まそうとした会話でもあっても、言葉の選び方やかける一言によっては、当事者の心を閉ざしてしまうような出来事も起きています。
なので、LGBTQsについて正しい理解を持つことが非常に大切です。
私は、18歳の頃から自身のセクシュアリー(性的指向・性自認)について意識するようになりました。今は、「自分はレズビアン(性的指向・性自認)」と認識し、歳上の彼女と一緒に生活しています。
この記事では、LGBTQsの当事者である私が、正しいLGBTQsの意味や捉え方について解説します。この記事を読むと、身近な人に対しても、社会全体に対しても、正しいLGBTQsの知識を持って接することができるようになります。また、「自分はLGBTQsのどれかに当てはまるかも?」と感じている人が、何かの気づきも得るきっかけになるかもしれません。
SDGsで掲げられている「ジェンダー平等」をきっかけに、今、世界全体でのLGBTQsに対する関心と理解が広まっています。ぜひ正しい知識を持って、社会を俯瞰できる視点を身につけてください。
LGBTとは?何の意味の略?
LGBTとは、セクシュアルマイノリティ(Sexual Minority)の総称の言葉です。「LGBT」は、下記のような言葉の頭文字をとった言葉で、「LGBTQ」や「LGBTQs」と表現されることもあります。1つ1つを詳細に確認してみましょう。
L(レズビアン/Lesbian)
女性の同性愛者(心の性が女性で、恋愛対象も女性)
G(ゲイ/Gay)
男性の同性愛者(心の性が男性で、恋愛対象も男性)
B(バイセクシャル/Bisexual)
両性愛者(自分の性は問わず、恋愛の対象が男性と女性の両方)
T(トランスジェンダー/Transgender)
「身体の性別」と「心の性別」が一致せず、違和感を持つ人。
身体は女性だけど心は男性、など。「心の性別」にそって生活したい・生きたいと望む人が多くいます。
Q(クエスチョニング・クィア)
自分自身のセクシュアリティを決められない、わからない、決めない人の総称。
s(複数形のs)
上記のL・G・B・T・Q以外にも、下記にて詳細に説明する「4つのポイント」をもとにLGBTQに該当する人はたくさんいます。その「身体の性」と「心の性」、「恋愛対象」や「性の表現」の組み合わせは多岐にわたるため、英語の複数形の「s」を用いて「LGBTQs」と表記することで、様々なセクシュアリティマイノリティの人を包括した表現としています。
LGBTQsを理解・考える上での4つのポイント
身体的な性
身体的な性とは、生物的・学術的に男性と女性を区別することを指します。
多くの人は、生まれた時から男性または女性のどちらかに分類されて成長していると思います。その性別と分類されてきた根拠は、大概がこの「身体の性」からなるものとされています。
性染色体や外性器、性ホルモンなどにより、男性か女性のどちらかとされています。
しかし稀なことであるかもしれませんが、女性でありながら内性器として精巣を持っていたり、男性と判断されたものの体内に卵巣がある人もいます。
性自認
性自認とは、「自分の性(性別)をどのように認識しているか」を指します。
「心の性」と表現すると、すこし身近に感じやすいと思います。
多くの人は、「身体の性」と「心の性」が一致していますが、この2つの一致に違和感を感じる人もいます。
必ずしも、「身体の性」と「心の性」が一致する必要はありませんし、性自認として男性か女性の2つのどちらかでないといけない、というものではありません。どちらかを迷っている人、どちらにも当てはまらない人、日によって変わるなーと感じている人もいます。
性的指向
性的指向とは、「どんな性を好きになるか(恋愛感情を抱くか)」を指します。
自分と異なる性の人を好きになるのか、自分と同じ性の人を好きになるのか。異性か同性かの定義が、相手の「身体の性」によるものか「心の性」によるものか。
また、相手の性に関係なく恋愛感情を持つかなどもこの要素に含まれます。
恋愛感情を抱かない「無性愛」という概念もあります。
性表現
性表現とは、「自分がありたい性、また、表現したい性」を指します。
例えば、「身体の性」も「心の性」も女性と思っている人にとって、「女性として生活したいか」は性自認が女性だからといって必ずそうとは限りません。
現代では、女性のパンツスタイルやショートヘア―もファッションとして注目されており、昔と比べると「ボーイッシュな女性」のファッションも違和感のない時代になってきました。
そんな中で、望んで「ボーイッシュな女性」のファッションをする人もいれば、自身のことを「僕」や「俺」などの一人称を用いて呼称する人もいます。しかし、だからといってその人たちが「身体は女性だけど、心は男性だからそのようなファッションや振る舞いをしている」とは限りません。
時代の変化に伴って、「性の表現」はLGBTQsの当事者にとっても、そうでない人にとっても、自由なものになりつつあります。
日本におけるLGBTの割合
日本におけるLGBTの割合を調べた有名な調査として一番に挙げられる「LGBT意識行動調査2019(LGBT総合研究所)」の結果をもとに、LGBTQsの割合を見てみましょう。
この調査は、2019年4月から5月にかけ「株式会社LGBT総合研究所」がおこなった大規模な実態調査で、全国20~69歳の個人42万8036名(有効回答者数34万7816名)を対象に実施したスクリーニング調査です。
この結果、日本においてLGBTに該当する人の数は約10%という結果になりました。
異性愛者以外の同性愛者・両性愛者・無性愛者・クエスチョニング・その他などと回答した人は全体の約7.0%でした。
また、性自認の区分において、体と心の性別が完全に一致していると回答した人は全体の93.9%、そのほかの約6.1%は体と心の性別が同じかどうかについて「違和感がある」や「わからない」「決められない」と回答したという結果になりました。
日本の人口の約10%ほどの人が何かしらの「LGBTQsに関わる自覚」を持っているという結果から、「LGBTQsは決して珍しいことではない/10人に1人は当事者」ということを感じられると思います。
LGBTの「カミングアウト」と「アウティング」
カミングアウトとは?
LGBTQsにおけるカミングアウトとは、これまで公にしていなかった性自認や性的指向、性表現を他者に自ら伝えることを指します。
自分がセクシュアル・マイノリティーであることを他者に伝えるのは、非常に勇気がいることです。伝えられた人は、その打ち明けに動揺することもあり、これまでの仲が変化することもあります。「この人になら伝えても大丈夫そう・伝えたい」と思ったときにカミングアウトを行うことが多いです。
伝えるときのシチュエーションや言葉の選び方などについて、念入りに準備をする人もいます。
アウティングとは?
カミングアウトは「他者に対して自分がセクシュアル・マイノリティーであることを自ら伝えること」ですが、アウティングは「他者に対して本人の同意なしにセクシュアリティーを言いふらすこと」を指します。
たとえ、どのような場面であったとしても、他人のセクシュアリティーを本人の同意なしに言いふらすようなことは行ってはいけません。このような誰かのふとした行為によって、差別やいじめに繋がり、自ら命を絶つことになった人もいます。
LGBTが日本の生活で困ること
セクシュアル・マイノリティーとして「少数派」とされるLGBTQsにとって、日常において「当たり前」とされることが「当たり前でないこと」も多々あります。
パートナーを扶養に入れられない
パートナーとこれからも一緒に生きていくことを固く約束した仲であっても、日本における憲法の婚姻に関する条文「両性の同意のもと」の解釈が「異性同士の同意のみ」とされている限り、戸籍に登録されている性別が同性同士のパートナーでは婚姻関係を結ぶことはできません。
パートナーを扶養に入れられないことで、税金や健康保険などの控除を受けられず、「異性同士で法律婚」を行えている人達と比べると生活や未来への不安が付きまといます。
法律婚ができないことにより、受けられない福利厚生がある
会社や企業で定められているような「結婚休暇」などの福利厚生を利用できない職場も多く、1人の労働者として不平等に感じている人も少なくありません。
「ルームシェア」では賃貸を借りれないこともある
結婚を前提にお付き合いしている人たちが新しい住居として賃貸を借りようとしている場合と、友人関係として2人以上で新しい住居として賃貸を借りようとしている場合では、社会全体に対する「2人の関係への信頼度」に差が出てしまいます。
そのため、「男女のカップルなら結婚を前提にしているので賃貸契約を結べるけど、ルームシェアでの賃貸契約は不可」というふうに固く決めて不動運営を行っている物件も少なくありません。
このような場合、地方自治体にて取り入れられている「パートナーシップ制度」や「ファミリーシップ制度」の利用を経てのパートナーシップ宣誓書を提示することで、契約が円滑に進むこともあります。
パートナーシップ制度自体、法律的に2人の関係を証明するものではなく、自治体が2人が共に支え合って生活していること・生活協同者であることを証明です。そのため、このような場合で必ず効力を発揮して難を越えられるというものではありません。ですが、このような事態に備えるために、今後将来的に共に支え合って生活していく予定なのであれば、ぜひパートナーシップ制度を利用すべきだと考えています。
まとめ
LGBTとは、セクシュアルマイノリティ(Sexual Minority)の総称の言葉です。
「LGBT」は、L(レズビアン/Lesbian)、G(ゲイ/Gay)、B(バイセクシャル/Bisexual)、T(トランスジェンダー/Transgender)、Q(クエスチョニング・クィア)、s(複数形のs)を連ねた言葉で、1つ1つに大切な意味があります。言葉の頭文字をとった言葉で、「LGBTQ」や「LGBTQs」と表現されることもあります。
また、LGBTQsを考える上では、4つの大事なポイントがあります。
「身体的な性」「性自」「性的指向」「性表現」
それぞれを自分に当てはめて考えてみると、自分のセクシュアリティや自分らしさと向き合えるようになります。
日本のLGBTQsの当事者の割合は、約10人に1人と言われています。「自分は違う」と思っていても、もしかしたらバイセクシュアルかもしれないし、あるいはこの記事を読んで自分の性自認や性表現についてしっくりとくるものを見つけた方もいるかもしれません。
LGBTやLGBTQsの生活が困ることは多々ありますが、今は各自治体でのパートナーシップ制度やファミリーシップ制度の普及も進み、住む地域によっては少しずつ社会で受け入れられつつある存在です。
同性婚の実現や多様な性の受け入れなどを経て、皆が安心して自分らしく生きられる社会が早く実現することを祈っています。
コメント